<初期対応>
まず救急外来に喘息患者が来院した場合、以下をすばやく同時に行う。
①重症度判定
②ルートキープ(まずは生理食塩水などステロイドなしで良い)し、血液ガス検査の考慮をしつつモニター装着する。
③酸素経鼻投与から開始する。必要があればマスクに変更する。
④治療選択を開始し、上級医にコンサルトを行う。
⑤余裕があれば聞き取りをする。
【血液ガス検査について】
*血液ガスはSPO2が90%前半、救急車にて来院しマスクで酸素投与をされていれば迷わず施行してよいと考えます。喘息発作では迷うときは血液ガスは行うべきです。 SPO2モニターで酸素の値は分かってもCO2の値は分かりません。 過換気になったりCO2が溜まっていたり、思いのほか酸素化が悪かったり良すぎたり、軽症と思い込んでいる場合もありますので救急車で来た場合は軽くても行う方が安全です。ウォークイン症例でも中等症は多くみますのでぜひ行ってください。その際に何リットルの酸素をどの経路で投与し何分後に血液ガスをしたかどうか記載しておくと出来る研修医だなと思います。 例:2L経鼻酸素投与開始後3分 この場合酸素投与前にとる必要はまったくありません。治療開始が何より優先です。
<治療の選択>
軽度(小発作)→発作治療ステップ1
中等度(中発作)→発作治療ステップ2
高度(大発作)→発作治療ステップ3
重篤→発作治療ステップ4
発作ステップ1
短時間作用性β2刺激薬吸入 1-2パフ 20分おき2回反復 ブ
デソニド/ホルモテロール吸入薬追加吸入
発作ステップ2
β2刺激薬ネブライザー吸入反復 20-30分おきに反復する。
脈拍を130以下に保つ。
ボスミン(0.1%アドレナリン)皮下注
アミノフィリン点滴静注(アミノフィリン3㎎/㎏を等張液薬200-250mlで1時間程度で投与する。)中毒になることもあるので注意する。
ステロイド薬点滴静注(ベタメタゾン4-8mg点滴を1時間を目安に投与する)
酸素(SPO295%前後を目標に)
抗コリン薬吸入考慮(緑内障や前立腺肥大には禁忌、即効性は乏しい)
発作ステップ3
ボスミン(0.1%アドレナリン)皮下注
アミノフィリン持続点滴
ステロイド薬点滴静注反復
酸素
β2刺激薬ネブライザー吸入反復
発作ステップ4
上記治療継続 症状、呼吸機能悪化で挿管・人工呼吸 気管支洗浄 全身麻酔を考慮
ボスミンは、虚血性心疾患、緑内障、甲状腺機能亢進症では禁忌であり、脈波を130以下にキープする必要があり高血圧の存在下では血圧、心電図モニターが必要であり研修医の判断で使用するにはややリスクが高く上級医との相談が望ましい。
アミノフィリンの投与も発作前にテオフィリン薬が十分に投与されていると副作用(頭痛、吐き気、動悸、期外収縮)が出やすいため注意が必要。副作用の出現で即座に中止する。 アミノフィリンがすでに投与されている場合は通常投与6㎎/㎏の半量以下とする。
ステイロイドの選択もさまざまだが初期対応としてアスピリン喘息の有無がはっきりしない場合はコハク酸エステル型ステロイド薬であるメチルプレドニゾロン、水溶性プレドニンの使用は回避する。投与時間は30-60分であるが初回の場合は1時間程度かけて投与することが推奨されている。心不全の合併例も多く急速に多くの薬剤を投与する時には注意を必要とする。
大発作・重篤な発作の患者の場合はかならずルートキープの段階までに上級医への相談をしてもらうと方がよくその際には喘息発作の強度とバイタルを伝えること。 問診内容は治療にも役たつためできれば早めに聞き取ることが望ましい。 本人が会話不能な場合は家族から聞き取る必要もある。
<喘息発作問診 ポイント>
・喘息の治療歴・喘息発作歴
・喘息の入院歴の有無(ICUか一般病棟か)
・喘息にて救急外来受診歴の有無
・喘息による呼吸不全や挿管の既往の有無。
・これまでの服薬状況・最後に使用した薬の名前とその時間、およびステロイド薬の使用の有無
・アレルギーの有無・薬(特にNSAIDs過敏喘息かどうか)
・食べ物
・発症時間
・増悪の原因
・労作の可能な程度と睡眠状況
・心肺疾患および合併症の有無(心不全、気胸、肺血栓塞栓症は特に注意が必要)
<救急外来からの帰す基準>
喘鳴消失、呼吸困難なし(%PEF≧80% SPO2>95%を目安)が1時間以上続けば帰宅可能。
ただし従来の治療をステップアップしないといけないので帰宅判断がつかない場合は治療後1時間後にコンサルトしたり、もし基準を満たした場合はどの薬をどのように変更、追加すべきか前もって聞いておいてもよい。 安静にしていると喘鳴は消えやすいが退出しようと動くと息苦しさを訴えることも多く、コントロールが悪いと一時的に点滴にて改善しても薬が切れると再燃しやすいため無理に帰宅させない方が安全である。特に初めての発作や過去に喘息にて挿管歴がある患者さんは症状を伝えにくい場合もあるので注意が必要である。 迷った場合は上級医になんでも相談したほうが安全です。