『Time is Brain』という言葉が示すように、脳卒中による神経後遺症を最小限にするために、
脳梗塞急性期の治療は時間との戦いになります。
現在、t-PA(アルテプラーゼ:商品名グルドパ、アクチバシン)静注による
血栓溶解療法が認可されていますが、そのためには、
患者の神経所見を迅速に、もれなく評価する必要があります。
脳外科を回る時には、NIHSSを正確にとれるように練習しておきましょう!!
NIHSSの評価方法については、続きを読んでください。
【NIHSS(NIH Stroke Scale)】
1a)意識水準
0:完全覚醒
1:簡単な刺激で覚醒
2:繰り返し刺激、強い刺激で覚醒
3:完全に無反応
※ 痛み刺激に対し、反射以外の姿勢を示さないときにのみ3点とする。
1b)意識障害-質問(今月の月名および年齢)
0:両方正解
1:片方正解
2:両方不正解
※この時は、ヒントを与えたり、指導を行ってはいけない。
※訂正を行って正解した場合も、最初の答えを採用する。
※失語症や昏迷状態で質問が理解できない場合は2点とする。
※挿管、口腔外傷、高度の構音障害、言語の問題など失語症によらない何らかの問題で
話すことが出来ない場合は1点。
1c)意識障害-従命(開閉眼:手を握る・開く)
0:両方可
1:片方可
2:両方不可
※指導したり、励ましたりしてはいけない。
※理解を示さない場合は、パントマイムは行っても良い。
※手が使えない場合(外傷・身体障害など)は、他の1段階命令に置き換えても良い。
※昏睡患者は2点。麻痺があるときは健側で評価する。
2)最良の注視(眼球の水平運動)
0:正常
1:部分的注視麻痺
2:完全注視麻痺
※検査前に左右の自発的運動がないか確認する。
※反応がない場合には、人形の目現象がないか頭を左右に動かし、眼球の動きを確認する。
※従命不能なときは、頭位変換眼球反射(人形の眼減少)により評価する。
3)視野
0:視野欠損なし
1:部分的半盲
2:完全半盲
3:両側性半盲
4)顔面麻痺
0:正常
1:軽度の麻痺
2:部分的麻痺
3:完全麻痺
5)上肢の運動(左右):上肢は座位で90度、仰臥位で45度挙上させる。
0:45度を10秒間保持可能(下垂なし)
1:45度を保持できるが10秒以内に下垂
2:45度の挙上または保持ができない
3:重力に抗して動かない
4:全く動きがみられない
N:切断、関節癒合
・Barre試験と異なり手掌は下向きで良い。
・検査は片側ずつ行い、検査内容を把握させるため、健側から行う。
・覚醒していない場合は、軽い痛みを与え、自力で腕を動かせるか確認する。
6)下肢の運動(左右):仰臥位で下肢を30度挙上させる。
0:30度を5秒間保持できる。(下垂なし)
1:30度を保持できるが5秒以内に下垂
2:重力に抗して動きがみられる
3:重力に抗して動かない
4:全く動きがみられない
N:切断、関節癒合
・検査は片側ずつ行い、検査内容を把握させるため、健側から行う。
・覚醒していない場合は、軽い痛みを与え、自力で腕を動かせるか確認する。
7)運動失調:指鼻指試験
0:なし
1.1肢
2.2肢
N.切断、関節癒合
・運動失調は、筋力低下の存在を割り引いても存在するときのみ評価する。
・理解力のない患者、片麻痺患者では失調はないと評価する。
8)感覚(pin prickテスト)
0:障害なし
1:軽度〜中等度障害
2:重度〜感覚脱失
・意識障害や失語症例などでは、しかめ面などの表情や逃避反応などで評価する。
・出来るだけ多くの部位で検査する。
・無反応、四肢麻痺、昏睡患者、脳幹病変で両側感覚障害を認めるかんなでは2点とする。
9)最良の言語
0:正常
1:軽度〜中等度の失語
2:高度の失語
3:無言・全失語
・絵カードの中で起こっていることを尋ね、呼称カードの中の物の名前を言わせて
文章カードを読んでもらう。
10)構音障害
N:挿管または身体的障壁
0:正常
1:軽度〜中等度
2:高度
11)消去/無視
0:なし
1:軽度〜中等度
2:高度
・ 両側の2点同時の(皮膚)刺激は、閉眼して行う。
・ 高度の視覚障害があっても(皮膚)刺激に対する反応が正常であれば、スコア0とする。
合計 42点
【参考文献】
ISLSコースガイドブック―脳卒中初期診療のために
ちなみにPDFもネット上に掲載されています。
NIH Stroke Scale (NIHSS)